本書は1997年5月「シリーズ今ここに生きる子ども」の1冊として岩波書店より刊行され,ロングセラーとなっています。
子どもと悪 (岩波現代文庫〈子どもとファンタジー〉コレクション 4)
- 作者: 河合隼雄,河合俊雄
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2013/12/17
- メディア: 文庫
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当時、「創造的な人たち」(鶴見俊輔、田辺聖子、谷川俊太郎、武満徹、竹宮恵子、井上ひさし、司修、日高敏隆、庄野英二、大庭みな子)に「あなたが子どもだったころ」と題したインタビューをして、どんな子ども時代を送ったのかを聞き、それぞれについて河合隼雄さんが詳しく説明しています。皆さん、必ずしも優等生タイプなのではなく、創造力を養う上での必要「悪」があり、絶対に犯してはいけない悪とは違うとありました。
<現代日本の親が子どもの教育に熱心なのはいいが、何とかして「よい子」をつくろうとし、そのためには「悪の排除」をすればよいと単純に考える誤りを犯している人が多すぎる。そのような子育ての犠牲者とでも呼びたい子どもたちに、われわれ臨床心理士はよく会っている。
そのような思いが強いので、どうしてもこのことを最初に論じることにした。>
<日本で、子どもを取り巻く悪として考えねばならぬことは、大人の「善意」による悪ではなかろうか。「子どもの幸福を願って」大人がすることが、子どもの不幸につながっていることが多いように思う。>以上 本からの引用です。
親である人間の創造力や経験値で、自分の子供や生徒に「それは悪いことだよ」と諭す事で、子供の心やここぞという時に踏みとどまる経験を摘み取ってしまう恐れがあると読んでいて感じました。
<「いい子」を育てる教育に熱心な社会では,子どもが創造的であろうとすることさえ悪とされることがある.>引用(解説=岩宮恵子さん)
本書では、・悪とは何か、盗み、暴力と攻撃性、嘘、秘密、性、いじめ
あとがき
[補論1] 悪への挑戦
[補論2] 昔話の残酷性
[補論3] 子どもの「非行」をどうとらえるか
解説
岩宮恵子
〈子どもとファンタジー〉刊行によせて
河合俊雄
にまとめられています。
ネット社会であり、寛容性が無くなりつつある日々だからこそ、どのように子供をそだてていきたいか。
決して悪を容認しているのではなく、
経験値や創造性、思いやり、心の安定や自己肯定感を養う事まで、「悪」として制限してしまう事は、子供に対してあまりにも可哀想ではないか、、という論点からの本で、親として、非常に勉強になる本でした。